おっぱい/六崎杏介
日が暮れてゆく
星座を数えるスピードで歩く
靴が雨上がりに湿ってゆく
五感を研ぎ澄ます、最高のシナモン
6000/gで彼女のおっぱいを
引きにゆくんだ、そして
あのアパートはエデンになる
エデン?田園地帯の一等地の
アパルトメント
私は12時迄には帰ります
宛先不明の手紙を遺して
軽くも重くもない足取りに
ぺたり、ぺたりと蛙の鳴き声で
ああ、夏だから、やっぱり、と
おっぱいが汗ばむのを心配しては
財布の中身を継ぎ足しにセブン銀行へ
私はシックスだがサックスを吹けないが
吸う事は出来ると、煙草を買う
駅に着く前にすっかり夜が噴水する
JR西日本がチケットの為のチケットを
機械に託している、私はおっぱいを
―おっぱいの香りへの憧憬で車内を満たす
いいシナモンを買うにはやはり
彼女から引くに限る
週末ごとに世界は宵山だ
いいおっぱいはやはり
愛する彼女から買うに限る
週末ごとに世界は宵山だ!
「まったく晴れやかな夜だよ、トリステン!」
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