狂人はひそかに旅をする /七尾きよし
 

出会いは別れを意味すると
自然とぼくの辞書には記されていて
愛することにいつまでたっても慣れない
そうじゃなくてぼくにとっての愛は
他人にしてみれば愛ではないのだろう
話はもどって
ふわふわと空飛ぶような
眠そうな顔したぼくは離人症
病気というよりぼくの個性なのだろう
こころが苦しくなったのは3歳のころから
きっと医者は病と呼ぶんだろうけれど
妹が分裂病になって
とてもじゃないが診察に行く気分にはなれない
狂人は理解されることよりも
狂人のままぶらりと生きることを望む
たましいの乾きをうるおすことを
生きることとぼくは言う
戻る   Point(5)