哀しい夢をみた/朽木 裕
 
哀しい夢をみた。


逢いたくて夜中に君の家の扉をたたく。
君はまだ眠りのなか。


刻々と時間は過ぎる。
私は扉をたたき続ける。
夜中のはずなのに門限が迫る。

12時が近付く。


ようやく目覚めた君は
やわらかく私を抱きしめてくれる。

嬉しくて。

命が温かい事に安堵する。


君の手を引いて私は急ぐ。
けれども何処へ急いでいるのか。

求めているのか逃げているのか。


時間が。時間が。


針が振れる。

君が手からすり抜ける。





幾ら待っても、もう来ない。


哀しい夢をみた。

体育座りのまま朝が来る。
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