あらかじめ決められているルートをなぞるようにタクシーは夜を走っていく/大覚アキラ
真夜中に
ペパーミントの匂いのするタクシーの
バックシートに身体を沈めて
焦点をずらしたまま
流れてゆく光の帯を
瞳孔の奥のほうで感じている
信号待ちで隣に並んだ深緑のジャガー
シグナル
ブルー
アスファルトに黒い痕刻み付けて
一瞬で置き去りにしてゆく
あんなふうに
ぜんぶ置き去りにして
形あるものを
ぜんぶ置き去りにして
戦線離脱しませんか
一緒に
そんな
甘い
オレンジジュースみたいな気分が半分
もう半分では
明日の
戦い方を考えている
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