赤い水溜りが誘う/朽木 裕
絶望を映した水溜りにひとり沈んでいく。
電線が、
そこには写りこんでいてひょっとしたら
水溜りに呑まれていく自分の、
手や肩に引っかかるかと思ったのだけれど
意外にもそれはやわらかく
僕を救うには至らなくて。
どうしようかな。
呑まれて呑まれて呑まれて考える。
あの曲にまだ言葉をのせていないのが気懸かりだ。
好きな雨が作った足元の幻想。
なんて甘美で痛々しいんだろう。
笑って別れたのがせめてもの、救い。
まぁそんなのいつもの事だけど。
もしこの上を通りかかったらワインを注ぎ足してくれないかな。
赤い赤い赤い水溜りが
世界にひとつくらいあったっていいでしょ。
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