それでも心は穏やか。/腰抜け若鶏
憎しみ、不満、嫉妬。
策略と陰謀。
表の笑顔と裏の憎悪。
誰もが他人の幸福を喜ばず、
他人の涙を見て悦に浸る。
他人が幸福になるのを許されないように、自分もまた幸福になることを許されない。
そんな簡単なことにさえ気が付かない。
いずれは年をとり、衰えた体を良心に守ってもらわなければいけなくなる。
そんな当たり前のことにさえ気が付けない。
年をとってから気が付き、そして後悔する。
人は失敗しなければ己の過ちに気が付かないらしい。
これまでの自分を悔い改め、やっと正しいことをしようとするも、
若い力によって隅へと追いやられ、世の非情を嘆きながら一人淋しく死んでいく。
それでも心は穏やか。あの頃のような深刻さが今はない。
まるですべてがふざけた茶番のように、今の私の目には映ってしまう。
ならば自分の人生すらも茶化してみて、
一人の道化として生きる以外に道はあるまい。
ゲーテは言った。
『人生は悪しき冗談なり』
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