舟を漕ぐ、山に向かって/美味
舟を漕ぐ君の隣で
高速で様変わりしていく風景を
蜜柑を食べながら眺めている
君は蜜柑の皮を吐き出すのを嫌がったね
おてんとう様に申し訳が立たないといって
ほら、海が見えたよ
三角の白波が
光を反射してきらめいている
風は無いのに潮の匂いがする
君はこの海で言うと、どの辺にいるんだろうね
そろそろ戻ってくる気はないのかな
一人でいるのも飽きたんだ
なにより、君の舟漕ぎがどこかにぶつかりそうで
危なっかしいよ
その内、僕の肩を枕にしたけど
あんまり座高が変わらないから
後で首が痛くなりそうだね
頼むから涎だけは垂らさないでおくれよ
帰港したにも関わらず
さらに深くに潜ってしまうのは
許してあげるから
目的地に着いたら僕の相手をしてくれよ
海は嫌いよ。泳げないから。
で、どこに行くの?
安心してくれ給え
目的地は山ですから
蜜柑は皮まで食べる派ですから
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