ウォッカ/
佐々宝砂
夜の底で
とうめいな液体を
グラスに注ぐと
風景がゆがみはじめる
どこにもない空間の
だれのものでもない腕に
すがろうとしている
私の指先に
流れるはずのない涙と
あるはずのない血潮が
たらりしたたり
私は死なずに酔っている
酔っているのはもちろん
ウォッカのせいである
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