シケモク/
佐々宝砂
まだ宵のうちの喫茶店に
吸殻と空のコーヒーカップと
素っ気ない挨拶を残して去る
そのひとを見送ったあとで
私は煙草に火を点ける
何気ない仕種に見えるよう
すこしだけ気を使って
(そんな必要ないのだけど)
こんなたぐいのことをするのは
もう二十年ぶりだとおもう
なんてばかばかしいのだろう
結局のところ
誰の吸いさしだって
シケモクは不味いに決まっている
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