今日泣いた/松本 涼
今日私は泣いた
哀しかったからじゃなく
辛かったからじゃなく
痛かったからじゃなく
私は泣いた
嬉しかったからともちょっと違う
ごろんと布団に仰向けで
片てのひらを片まぶたの上に乗せたまま
私は泣いた
その時私は私を見ていた
過去や今やいつかの私じゃなく
泣いたり笑ったり怒っている私じゃなく
食べたり働いたり歌ったりしている私じゃない
私を見ていた
叫んでいるのともちょっと違う
その私は孤独の跳躍だった
その私は無形の衝動だった
その私は原色の自由だった
その私は轟音の願いだった
その私はとても確かな熱だった
その私を送り続けているところと
その私が送り続けているところへと
私は繋がった
そして今日私は泣いた
とても短い時間の中で
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