アンソニー/
竜一郎
の絵は本当に
ぼくをひきつけるからだった
アンソニーは不眠症になりながらも
絵を描いていると風のうわさに聞いた
ぼくは小さな窓から
アンソニーの立てかけたカンバスが
ゆっくりと色に塗られながら
ひっそりと倒れていく音を
聞いて、少しかなしくなった
もう、その壁はなくなっただろうから
「ねんねんころりよ、おころりよ」
母が娘をあやす声が聞こえる
僕にとっての妹が生まれた頃の話だ
(*に相当する国。地図がないので記号で代用)
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