声の胸/静山和生
 
            かたく編みこまれた織物を            気の遠くなるような深呼吸とともに                    ゆっくりとほぐしてはゆけないだろうか                  もつれた肉体を結ぶイマージュの糸は                   しどけなくゆるみだし              ゆるんだ果肉が舌の上で甘くほどけてはうちよせる             うるおいの残り香を口にしたまま見る夢は                 だれもが忘れてしまうとゆう                       そんな嘘をつきつづけていた小雨すらもう降らない             今はただ                    その雨の密度を縫うように駆けていったいくつかの影が                       粗い生地となった胸に血痕のように                    しみ込んでくるだけだ              それは決して聖痕とはならない 裂果のコサージュ
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