貴女のこと/クローバー
存在を話した
チョコレートを、傾けながら、貴女は聞いていた
こちらのことを話せば、貴女のことも聞けるだろうという
算段が確かにボクにはあった
しかし、一言も発することなく黙々と貴女は聞いていた
「・・・という人間なんです、それで、ここに住んでいるんです」
ボクの話を聞き終えて、貴女は一言
「そう」
と言い、興味もなさそうに
「おやすみなさい」
と言って用意した寝床へ、下がっていった
明けると、どこかへ、行ってしまっていた
挨拶もなしに、とも思ったが、知られずに帰ったのなら
願ったり叶ったりだった
しかし、昼ごろ、貴女は帰ってきた、少しだけ微笑むと
「宿代です」
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