グレート・ノベンバー /長谷伸太
 
 ぼくは吉田太郎くんの髪の毛のうちの一本です。名前はありません。これから名前がつく予定もありません。名前をつける必要が無いからです。僕はもうすぐ抜けて落ちてどこかへ消えていきます。消えないとしたら、地球は動物の毛でふかふかしてあたたかいはずです。抜けて落ちる前に、グレート・ノベンバーという変わった名前を持ったやつの話をしようと思います。髪の毛の話なんか、と思うかもしれませんが、まあ、髪の毛の話です。軽く聞いてください。
 そいつは最初、名前を持っていませんでした。なぜなら必要が無かったからです。グレート・ノベンバーという素敵な名前を得たのは、そいつが太郎君に出会ったからです。太郎君は英語が大好き
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