金平糖/月音
 


 「ごめんなさい」の 名刺を
 わたし たくさん 持っていた
 けれど
 ほんとうの 「ごめんなさい」は ほんの少しだったかもしれない

 それは とても かなしいこと
 隣町の休耕地で 
 れんげが そより と ゆれる
 風が もう一度と 言う

 「ありがとう」の 看板を
 わたし たくさん 持っていた
 けれど
 ほんとうの「ありがとう」は とても届かなかったのかもしれない

 それは とても かなしいこと
 単線の一両汽車が  がたごと と ゆれる
 風が もう 一度と 言う

 「あいしてる」の 小旗を
 わたし
 たくさん 持っていた
 けれど
 ほんとうの「あいしてる」は まだ少しも分かってないのかもしれない

 それは とても かなしいこと
 切りたての前髪が さらさら と ゆれる
 風が もう 一度 と 言う

 もう おざなりな わたくしは
 露のように 仕舞う

 手の中の砂糖菓子 そっと 渡すように
 手のひらが 甘い香りで にじむように
 言の葉を 放つ
 


 

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