自分のための幸福論/腰抜け若鶏
のだ。
その逆もあるから、至福という気持ちもしばらく味わっていない。
人生の起伏にいちいち感銘を受けたり、泣いたりわめいたりできるのは若者の特権だ。
俺もまだ若いからときどき刺激が欲しくなる時はある。
でも色々無理をしたせいで神経がもうすっかりすり減ってしまった。
俺はできることなら静かに穏やかに暮らしたい。でもたまには刺激が欲しい。
しかもできることなら、辛かったり苦いものではなく、甘くとろけそうな刺激が。
生き急ぐのを後悔したことがないわけじゃない。
でもおかげでどうすれば自分が満たされるのかを知るに至った。
自分のための幸福論。
世の中にはこの知識が得られなかったために、
人生に飢えと渇きを訴えながら死んでいく人たちがたくさんいる。
悪くない。
他人に何を言われようと、
俺は自分の人生がまんざら捨てたもんでもないと感じている。
心から。
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