潔癖症の子供/マッドビースト
美術の先生が
黒と白だけは
どんなに絵の具を混ぜても
作り出せないのだと言っていた
そんな貴重な色の絵の具は
どんな材料で作られ
どこの国の工場から送られてくるのだろうかと
想像をめぐらしていた授業時間
先生、
だけどこの街には
黒いものか白いものしかないように思うのです
僕にはそんなものばかりが目につくだけかもしれませんが
僕らはそんなものばかりを見つけては
名前をつけていくのです
それ以外のものは大人にあげてしまうのです
彼らはそれに僕らの知らない名前と色をつけてしまうけど
僕らはまったく興味を持てないのです
僕らが見つけるそんな大事なものは
茂みの中の廃屋のビルの壁だったり
線路の向こうの立ち入り禁止の地面に光っている石だったり
直接見てはいけない太陽の光だったりして
どれも本当にきれいなのだけど
どこか頼りなく感じてしまうことが多いのです
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