設計図なしで人間をつくる/カンチェルスキス
 
し押し込んでから手前に引き寄せると、きれいに口を開いたのだ。何ていうタイトルのドラマだったかはいまだに思い出せないでいる。そのことで自分を責めた。もしかするとおれがあのとき見たシーンは幻だったのだろうか。おれはあのとき死んでたのだろうか。‥‥‥‥今だってそんなに生きてるという感じはしないけど‥‥‥‥。確かにおれはあのとき牛乳パックの開封の仕方に関して、性の目覚めにも似た目覚めを感じた。だからこそ、おれはあれ以来、テーブルにミルクをこぼすこともなくなったし、右大臣や左大臣を呼ぶ必要もなくなったことで経済的にも楽になったのだ。もちろん、割り箸を割りすぎて利き腕が筋肉痛になったときを除いて。そう、おれは
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