communication breakdown (1〜3)/アンテ
いおわったあとも
きみは一日じゅう
一言も口をきいてくれなかった
安全運転
ひどい運転だといつもきみが言うので
今日は安全運転を心がけた
規制速度を守って
標識をひとつひとつ確認して
黄色や白の線の通りに走って
無事駅に到着した
ところで今日は何時ごろ帰るの
訊ねると
きみはぴしゃりとドアを閉めて
一度も振り返らずに行ってしまった
車を停めたまま
ホームを見上げていると
階段を登り切ったきみは
ため息をついて
「7」という字を宙に書いて示した
家までの同じ道を
安全運転をして帰った
壷
悪いことを全部吸い込んでくれる
魔法の壷があればいいのにね
なんの気なしに
そう言ってみただけなのに
きみはお茶を飲む手を止めて
押入れから掃除機を出してきて
何年か分の中身をぶちまけて
ぱちぱちと手をはたいて
またお茶を飲みはじめた
窓を開けると
部屋じゅうに埃が舞い上がった
どう 壷のなかにいる気分は
きみはごちそうさまをして
掃除機のコードを伸ばした
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