「君を問い返すのは海の言の葉」/はゆおりいと
 
 眠りの中で思い出すのは思い出となった未来の景色
 波は雲に砕け水面は空に満ち風の駆ける水底で君は微笑む
 陽炎は光の衣をまとい
 過去に残された思いは忘れ去られた今を抱き留める
 透明な波音が魚たちに焦がれる
 閉ざしたままの、心の奥底


 灰色の大樹は遥かな丘を守り続け
 純白の人形は柔かな影を地に落とす
 此処には何もなく、ただ、全てだけが其処にあったこと


 陽光の下で海は青く透き透り
 月影の中で秘めた暗さに沈み込む
 置き去りにされたものたちが声を上げる
 もう誰も振返ることのないように


 眠りの中で思い出すのは思い出となった未来の景色
 波は砂に溶け水面は海に引き風の駆ける浜辺で君は振向く
 妖精たちは霧の尾を引いて
 もはや届かない言葉は悲しみにかすかな色を添える
 魚たちが過去に帰っていく
 醒めないままの、心の奥底
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