もうちょっとなんです/ベンジャミン
 
しだけ泣きました。垂直に立ち上る気流のせいで、涙は空へ還ってゆきます。


(モノトーンの夕暮れ)

波打ち際のクラゲはいつの間にか溶けていましたから、もしかしたらもうすでに海の一部になって透明から青色に変わっているかもしれません。それが空の色を吸い込むのは、もう少し後のことでしょうから。僕はあと少しだけ水平線を眺めていよう。


だから
もうちょっとなんです。


あともうちょっとでとても美しい詩が書けそうなんですが、その頃になるともう陽が落ちてしまっているので、すべての境界線はひとつになり、それはとても自然なことなのですが。僕はもう家に帰らなければいけない。


そのとき振り返ると、何かを言いかけて。そして、少し口を開いたまま海と空をしばらく見渡しますが。


僕は砂浜に足をとられながら、いつもそこまでしか辿り着けないままなのです。


また少しだけ
涙がこぼれそうになっても



そこには僕しかいないので
波音だけが哀しく響いています。






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