無題/刑部憲暁
ずっと寝ているんだ ぼくは
ふかふかの布団の中で
地球と一緒に
月が東の空を駆け昇るよ
西の空を駈け降りるよ
風が優しいような顔をして
ぼくを揺すり起こすけど
ぼくは我慢を続けるんだ
寝たふりを決め込むんだ
金星が東の空を駆け抜ける頃
地球はすっかり寝返りを打った
ぼくがベッドの脇を見ると
真っ白なシーツはしっかりとのり付けされたまま
皺なんか少しも寄っていないんだ
ああ ぼくはずっと寝ているんだ
最後までこのままでいるんだ
最期の時までこのまま寝ているんだ
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