欺瞞の坪庭/あおば
 
うでない者も
転ばないように
足を踏ん張る
見たもの乞食の面構えは
フルートを吹く芸人のように
純朴なので
拍子抜けした水鉄砲で
箱庭の蛙の顔に水を掛け
今日も良い天気
洗濯物がよく乾くわねと
大正生まれの伯母さんが
ころころと笑う声を
坪庭に閉じこめてから
粘土細工の玩具の
ブルドーザーのキャタピラに
中性の水を吹き付ける

おどけた蛙
顔のない蛙
巫山戯て開いた
その口に
シャワーのように
贅沢に
春の光が
空が
降り注ぎ
何処かで雲雀が鳴くような
青白い雪柳が
顔をのぞかせ
すぐ引っ込んだ

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