サト/実夜
地元の海を見に、帰ります。
海岸にはいろいろなものが流れ着いていて、
それらを愛でに帰ります。
磨かれた硝子、
滑らかな流木、
色巻貝の中心、
秘密の詰め壜、
そんなものを拾ってきます。
灰色の海は心を曇らせも晴らせもします。
全てを流して、帰ってきます。
風に潮がのって、部屋の窓から忍び込むのを
楽しみに帰ります。
夢ではきっと、暗くて生暖かな海に
沈むのだろう。
きっと、稲荷の使いがあいさつに
やってくるのだろう。
夜中に静かに。
懐かしいよ。
全てが。
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