るーぷする。/夕凪ここあ
 
夜が訪れたことに気づかないでいたら
いつが夜明けなのかわからなくなってしまった
区別がつかない 月は
欠けているのか 満ちていくのか
私の呼吸と 似ていた



お話と呼ばれるものはいつだって
甘く、一瞬で溶けてしまう幻想の
金平糖と同じ形をしていたあの日
お母さん、眠れない夜にはいつも
遠くの方で淡く光っていたそれを
私にはまるで手の届かないそれを
一粒拾ってきては聞かせてくれた
お母さん、私はそれから夜、には
月の満ち欠けを間違えることなく
眠りの奥深くに閉まっておいて、
ひつじのかわりにしていました。


窓を開けても匂いは見当たらない
すっ
[次のページ]
戻る   Point(8)