すべての魂は夜、癒される/いとう
午前5時
始発間近の空気はいつも冷たくて
そのくせとても透き通っていて
「こんな街でもきれいに見えるね」と
僕たちは手を繋いで歩いている
空もそろそろ明るくなりそうで
誰かが吐いた道端の吐瀉物さえ輝いて
繋がれた手を
少しだけ強く
握ってみたりして
世界は時々こんなふうに
とても美しい姿を見せてくれるけれど
僕たちは上手く溶け込めずに
そう たとえば
せめて通行人の役でも立派に
果たすことができるなら
少しは救われるのかもしれない
夜に君が流した涙は
日が昇る前に乾いてしまった
今はもう
その痕跡すらわからないけれど
君は確かに昨日
僕の前で泣い
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