荒れた畑でわたしはとても健やかだった/ミネ
 
鍬も
鎌も
放り出された
むき出しの畑
半分お気楽に
半分苦しげに
つるが垂れ下がっている

歴史参考書も
試験マニュアル書も
免許書なんかも
土手の方に投げ捨てちゃっていたので
わたしはとても健やかだった

春というにはじりじりと
太陽が近くって
足はムラムラと
汗で湿っていて

でもわたしは健やかだった
荒れた畑と野の花
バッタやアブ
さびたドカン
特別防衛施設庁と彫られた
石柱の前で


雑念と善悪が
ふたつにわれた固いもちになってころがる
仰いでも
仰いでも
そこは空

肥料の匂い
古い石の匂い

わたしが健やかであること
みんなが健やかであることを願って
じぃちゃんばぁちゃんは
鍬や鎌をもち
泥と血豆にまみれ
土壌を耕していたのだ


いろんな草の種がジーンズにひっついたまま
わたしは健やかに立ち去った
カエルの鳴き声がなにか合掌のようでもあった
風がそよそよしていて
川は静かにせせらいでいて

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