父はそれを宇宙と呼んだ/美味
このバケツにはなぁ、宇宙が詰まっているんだ
なんて突然
途方もないことを言い出した父
何故か表情は輝きに満ちている
どこにでもありそうな青いポリバケツ
昨日と一昨日とさらにその前と
私たちが連日出してきたゴミを
掃き溜めてあるだけだ
そんな何かを悟った顔をされたって困る
父はポケットから煙草を取り出して吸い始めた
そうしてポリバケツを眺めては
うんうんと頷いている
このバケツにはなぁ、宇宙が詰まってるんだ
お前に分かるかなぁ、分かんないんだろうなぁ
さも悔しそうにニヤニヤしているが
私には興味の欠片もないし
例え聞いたとしても分からないんだろう
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