バグダッド・カフェ/こん
 
 誰か 呼んでる
 あたしを 呼んでいる


 砂漠に沈む太陽
 陰影を深めゆく愛しき人々
 ああ この場で息絶えてもよいのだ


 小さな砂嵐にいつも まかれていた


 口も耳も眼も 砂で塞がれ
 塞がれることが 生きることで
 闇が訪れるたび
 体中の穴から さらさらと砂が流れ出す
 冷たい背中に星が降りそそぐと

 絶対零度の愛を思う

 指の先までサンドベージュ
 くるくる廻される砂時計のように 
 最後の砂が落ちる前に満たされてしまって
 「からっぽにして」と泣きながら 

  
 「からっぽにして」





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