さくら貝のうた/銀猫
 
散る散る  ちるらん
花びらの
風に任せた行く先は
夏の匂いの西方か

揺り揺る  ゆるらん
水面に降りて
さざめく海に恋がるるか

思えば君に逢うた日の
宵は海辺に砂嵐
さらさら  去りた足跡に
桜の貝の花びらを見る


嗚呼いつぞやのくちづけに
爪の色まで紅染めて
花を真似た かなしき貝殻の

ほろろ  涙の向く先は
去りゆく君の眼差しの
真直ぐな熱に耐えかねて
揺る揺る こころに
砂の舞う 舞い 舞う


去るる  さりさら  さくら貝



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