冷たい春/前田ふむふむ
どんよりとした鉛色の雨が、わたしの空洞の胸を
突き刺して、滔々と流れてゆく冷たさが、
大きなみずたまりを溢れさせている。
みずたまりには、弱々しい街灯の温もりによって、
歪んだ姿のわたしの言葉が、硬直して映りこんでいる。
それは、無造作に鋏で切り抜かれた真冬の風景―― 、
コンクリートを覆うスクリーンで青白く燃えている。
わたしの内壁をわずかに点滅する、もがくような灯火が、
あっけなく消える一瞬に、
予告のない、手の届かない充たされた時間が
多くの歓喜とともに、強引に過ぎてゆく。
羨みながら、濃厚に、
かなしみの旋律の色を染めてゆく、わたしは、
骨だらけの過去を引き摺
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