エレクトロニックワールド/美味
 
目に見えない0と1が
私と私でないものを繋いでいる
まるで未成熟のか細い蔦(つた)で
例えば、それがなくなってしまえば
事切れてしまう危うい命綱
そんなもので繋がっている
人の影を慕う滑稽な私は
確かに閉塞感と安堵感を覚えていた

絶対に会うことが無いのに
私と繋がっているのは
そこに顔が無いから
近付かず
遠ざからず
一定の距離を保ってくれている
0と1という壁のお陰で
私は私を保っていられる
構築される集合体は
暖かさのみで全てを包み込み
荒波と呼ばれる理不尽な
世界からの羽化を誘う

いつの間にか
カーテンの裾を揺らす風は
橙色に染められていて
ちらちらと
目を掠(かす)めるのは
太陽にも似た0だろうか
コップの袂(たもと)に出来た水溜りは
私の指を伝い
肘を伝い
また
新しい水溜りを作った



     新着メールは0件です






戻る   Point(3)