ぬるい紅茶/loveondesk
女はベッドの上から手を伸ばしてカップを取り、そこに少し残った紅茶を一口すすった。ぬるくやや渋みが沈殿していた。終わりの頃は何でもこんな味がするものかも、と思いついたが、そう思うことは現実を作り出しそうで嫌だったので首を振って否定した。ベッドの男は寝息も立てず羽毛布団の端を足に巻き込んで熟睡している。セックスは中途半端だったが、そういう時はいつも夜中に目が覚める。だが不快というわけでなく、むしろ火種をともしたまましんとした闇と戯れるのは得がたい思索的時間だった。眠っている男は何を考えているのか皆目分からないし、窓ガラスから伝わる冷気は自分が高校でいい加減な解釈のシェイクスピアもどきの演劇をやっていた十年後に男の横で裸でぬるい紅茶を飲んでいることの非現実感をかき立てた。
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