走狗の悪夢/竜一郎
 
なぜ犬のやつらは鎖で繋がれているときは吠えて
散歩に連れられているときは吠えないのだろう?
と言ったあなたは布団の中では悪夢にうなされて
部屋の外では快活に過ごせる哀れな狗でしたね。
わたしたちの生活は明るく朗らかであったのに、
あなたの横顔はいつも世界に脅え翳っていました。
わたしは、あなたがなぜ苦しんでいたのか、とは
どうあっても訊ねまいと誓ってました。なぜなら
それを問われたとき、あなたはきっと予期せぬ、
その悪夢からの解放を夢見てしまうのではないか
という恐れをわたしが抱いていたからなのです。
止まったならば、わたしはあなたを許しません。
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