明日には、さかさまだった/夕凪ここあ
 
そんなことより私、空を
さかさまに見る方法を知りたいの



少女のすっと透き通った声
は何ものにも染まらない唯一
瞳は映した空を綺麗に切り取って
私はあの子に、
あの子の繊細な爪の先に薄紅の花びらを、
輪郭をなぞると
今にも消えそうで危うい、それでいて強い 線
触れてはいけない気がして
あの子が空の底に辿りついてしまう
明日には、また空に近づいて
私よりはるかに還る場所を知っている
白い、
ワンピースが 揺れる
風が また誘う心地良い心臓の速さで


そんなことより私、空を
さかさまに見る方法を知りたいの


声は何ものにも染まらない、ただ
あの子の知りたい空の底にいずれ届いてしまう

おとぎの断片でも
あの子に教えたくはなかった
明日私はおとなになる あの子が行ってしまうその横で


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