密会/アシタバ
 
星が刺さるほどに冴え返って

赤く爛れた月がうずくまっている

砂利を踏む音だけが

近い

門構えを超えると

冷たい墓石の間から

卒塔婆の墨字が倒れかかる

かねてからの頼まれ物を

ブルゾンのポケットに忍ばせて

指定の戒名を刻んだ石の裏へ廻る

すでに月は地を離れたか

不審な影が墓石をよぎる



小さく砂利がなって

女である

長い髪が顔を覆うほどに垂れている

差し出している手の白さ

頬の辺りはもっと白い

ポケットを探って取り出した

小さな壜を

手渡す刹那

青い液体が鮮やかに揺らめいた

これでやっと…

くれぐれも気をつけて

ではいずれ

いずれまた

砂利を踏む音が

反対の方角へ遠ざかっていった

丸い月が

墓地の香気を飲んで

青ざめていた
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