ウグイス/アシタバ
喉から太い棒でも吐き出すみたいに
喉を丸く膨らせて
叫んでいる男があった
付き添いの若者が言うには
鶯になりきっているのですよ
いや、一向にそうは思えませんね
男はオーーーと長く呻いているばかりである
まだ啼き方を知らないんです
しかしどうして鶯なんでしょうね
それはわかりません…
男の叫びあるいは呻きがわずかながら変調を来たしていくようだ
もうすぐです
若者は目を輝かせた
ホケキョ?
ほうら、ごらん、というようにこちらを見ている
ホケキョ!
若者は慈しむように目を潤ませ私の頭をなでた
しまった!(ホケキョ!)はめられた!(ホケキョ!)
若者は鳥かごを私の眼前に突き出し
お入り!
といってかごの入口を引きあけた
ホケキョ!と甲高く啼いて私はその中に躍り込んだ
お父さん!上手く啼きましたよ!
若者が男の方を振り返ると
おおそうか、それは結構
男は呻いていたのを忘れてケロリといった
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