@写真/貴水 水海
 
夜行バスは定刻通り発車した

僕は君の写真を見ている
もう使わなくなった
古びた定期入れに君の写真を入れた

とびきりの君の笑顔
ただそれだけを持ってきた

僕たちが離れている間
君はよく手紙をくれた
僕もよく返事を書いた

君がくれた手紙の束は
箱に入れて実家に送ったよ

君はなにかを忘れ去ろうと
思い出の分だけ
髪を短くした

君の切った髪が
はらはらと
風に浮かぶのが
今の僕には見える

これは別れじゃなくて
短い間のサヨナラ

僕たちが出会った頃の気持ちに戻るには
離れている時間が必要なんだ

僕たちがもし これからも一緒にいるためには
離れている時間が必要なんだ

一人でいれば

行くところ 行くところで
君を思い出すだろう

だから持ってきた
君の写真

古びた定期入れの中の
とびきりの笑顔の君を

離れていても一人じゃないと思えれば
きっと
時間は逆戻りしてくれるだろう
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