閉じた夏の日/夕凪ここあ
空が、
ゆっくりあの日の
色を取り戻す
あれはオレンジと呼ぶには淡い
橙と名づけた空を
描きとめたスケッチブックはもう
色褪せて
何度もアスファルトの先に
思い出を見ようとして
その影さえ踏めない
平行線を引いても
辿った先でいつも交わってしまう
今は何とも繋がらない
知らなければ
消えることすらなかったのに
ちりん、ちりんと夏の音がする
夜を迎えるあの虫の名前が思い出せない
橙は色褪せて
ゆっくりゆっくり
私はそれ以上の速さで
通り過ぎてしまった
ちりん、ちりん、と夏の音が、
私たちはあの日置いてきてしまった
陽炎の中 見えない
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