藍色の少女と/夕凪ここあ
藍色の少女は密かに夜の匂いを纏って
透き通った肌からは昨日が覗いていた
音もなく窓辺に降り立つと
そっと私の手に触れる ひんやりと
夜が私の体の芯に入り込む
裸足の爪先からは 夜が
生まれて果てしなく
まだ生まれたばかりのそれは
悲しみのせいか薄く消えそうな
それでいて決して消えないほどの
あれは月のない晩ひとりきりで見た夢のような
私は眠りによく似た心地良さに
手を伸ばす 瞬く間に私の昨日たちが
藍色に染まり透き通っていく
もう帰れないことを知った日
一枚一枚零れるように服を脱ぎ捨て
かわりに纏うのは少女の
手摺りに触れるとほんの少しあたたかい
もう私は少女の温度になってしまった
終わりの頃に涙が零れたが
夜と紛れて誰も知らない
私なのか夜なのかわからなかった
昨日や明日や夜明けと交差したはずだったのに
時間は存在しない私はもう
夜のまどろみに溶けて
藍色の少女と
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