蟻/アシタバ
 
ボール紙の小さな箱が濡れしおれている

白地に赤い矩形を散らした面は泥じみている

その上で蟻の細い行列が幾筋も

行きつ戻りつし交錯しあっている

つややかに黒い頭蓋のうちの

暗い虚ろで

神経線維そのものの震えが響かせる倍音が

一つの音階に固定する

その排他的なしらべに忽然として

片くずれた廃箱の内部より

礫をはこぶ機械のように営々と

篏口に把持した量塊から

自らの腔内へはわずかに砕けた細片のみ飲みこんで

黒い隊列の仮借ない行軍に連なる

地中の暗闇で肥っている

不可知の漆黒の際限のない食欲に捧げるために

彼はその身体まで差し出すだろう
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