嘘つきは泥棒のはじまり/プテラノドン
上映時刻から終了のブザーが鳴り終えるまで
席から離れないのは出演者やスタッフの家族だけだろうし、
成功するための初期過程はそんなものだった。
なんて、道程もしっかり次回作に盛り込んで
私は成長した自らの姿を、無機質な観客たちに
見せ付けるためにも彼らにおあつらえ向きな
等比数列で証明しなければならない。
それは収益数のグラフの上で、もしくは
辞書ほどの厚さを持ったパンフレットの上で
先人の泥棒たちにならって数々の苦難を乗り越えてきたと
吹聴して回ることにとどまらず
輝かしき成功が語られる履歴書の上でも、
山脈を隆起させるが如き粗々しい口調でもって
時にはハローワークの受付係りを前にして
宣言または懺悔してみせるのだが、
誰しもの、彼女の頬さえも濡らせはしないし
何の施しも受けられないだろうが
むしろ私はそれでいい、
なぜならすべては準備段階だからと、
私はパンフレットの末尾に付け加えるだろう。
いうなれば種を蒔いただけだと、
嘘がばれずに花が咲いたならと、
泥棒の初歩でもある面接に
―美術館に採用されたあかつきにはと。
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