始発列車/服部 剛
筋書きのない明日へと走っていく
朝焼けの空から 透けた(誰か)が
旅を始めた車窓の中の私を見ている
これから何処へ連れて行かれるのか
どんな私が創られていくのか
卵から孵り
深海を泳ぎ始めた魚のように
親から巣立ち
空へと必死で羽ばたく鳥のように
弱さを振り払いながら越えてゆく
日々の壁の向こう側に
一体何が待っているのか
列車は朝の光を受けながら
時の線路を走り抜けていく
旅人を乗せた行き先の知らない列車を見送り
遠のいてゆく桜並木を背後に残して
僕の想いを運ぶ
何億マイルの果てしない旅は
逃げる為ではなく
立ち向かう速さで
新たなる日々へ、疾走してゆく
戻る 編 削 Point(13)