始発列車/服部 剛
 
夜明け前の道を 
自らの高鳴る鼓動を胸に秘め
歩いていく 

川に架けられた橋をわたり 
駅の改札を抜けて 
無人の列車に乗り込む 

腰掛けると 
発車を告げるベルがホームに響く 

「出発進行」 

車掌の号令と共に 
列車はゆっくりと走り始める 
もう昨日へと引き下がることは出来ない 

車窓に映る朝焼けの空 
新たなる日々の幕開けを告げて昇る朝陽に 
真っ直ぐな瞳を向ける 

列車は加速していく 
野を越え 山を越え 
桜並木の中を走り抜け 
薄紅色の花びらを無数に散らし 
桜吹雪を巻き起こしながら 
全ての束縛を解き放つように 
筋書
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