ふたり/松本 涼
「せまいね。」
「ほんと せまいね。」
けれどさすがに会社には
ふたりで出勤するわけにはいかなかったので
毎日交代で出勤した
お休みの方のわたしは
部屋の掃除や洗濯をしたり
買い物なんかに出かけた
ある日わたしには会社に好きな人ができた
もうひとりのわたしにも会社に好きな人ができた
偶然にもわたしたちが好きになったその人たちも
長い間ひとりでいたせいで最近ふたりになった人たちだった
そしてわたしたちは今
それぞれにその好きな人と暮らしている
もうひとりのわたしとは
最近は会っていないけれど
時々電話で話をしている
何しろ悩みも全く同じだから
話が早いのだ
「色々あるけど 幸せだね。」
「うん 幸せだね。」
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