ふたり/松本 涼
あまりに長い間ひとりでいたせいか
ある日わたしはふたりになってしまった
わたしたちはさすがに元ひとりだったので
顔も体つきも声も性格もそっくり同じだった
「さみしかったよね。」
「うん とてもね。」
わたしたちはお腹がすく時間も一緒なので
せまい台所にふたりで並んでよく食事を作った
「わたしは玉ねぎをみじん切りにするね。」
「わたしはお鍋にお湯を沸かすね。」
見たいテレビ番組も好きなタレントも一緒なので
チャンネルの取り合いもしないですんだ
「小力いいよね。くすくす。」
「なんだかいいよね。くすくす。」
小さなお風呂にも一緒に入った
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