やまびとの散文詩(一) /前田ふむふむ
やまびとの散文詩・断片1
春の息吹が、空から地面から次々と芽吹いて、
美しい山々の栄光は、
わたしたちの赤い血液のように循環する貨幣と、
太陽の動きと星々を絶えず観察して、
それを文字や音楽に翻訳する男たちと、
顔の無い神の衣装を描く女たちによって、
齎されていた。
わたしたちは、一日のうち、明るいひかりが水色を帯びる
澄みきった朝をまどろみながら、山の恵みを食べて過ごした。
しかし、銀色をした大鳥が、空を跋扈し始めた午後から
青々とした山々が、擦れた金属音のこだまで蔽われて、
空が赤い水晶を散りばめたような夕暮れになると、
わたしたちは、満月の夜を検閲する海びとたち
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