毛糸編み機/アシタバ
自動販売機のまえでポケットを探ったら
孔のあいた小銭が一枚出てきた
もっとないかとなおも探ったら
小さなねじが入っていた
何のねじだろうと首をひねったが
煙草を買うのはあきらめて
家に帰り横になっていると
母親が凄い剣幕でとなりの男をなじっている
その白い上っ張りを着た男は
うろたえて口をもごもごさせ
ネズミみたいな目をきょろつかせている
母親は急にあたりを憚るように声を落とし
こちらを指差して
返品…
とか言っているみたいだった
いえいえそれはできませんよ
男は申し訳なさそうに小さな声を出した
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