dreamscape(2)/篠有里
それが間違っているという自覚はあるのにそれが何であるのかはよく分からな
いまま物語は展開していく私が何であるかという事はこの際あまり関係ないあ
あ匂い私の記憶を呼び覚ますのはいつも匂いだいつでも音はしない今日の私の
脳の特定部位を刺激する匂いは八月の締め切った部屋から漂ってくる蒸れたい
草マットの匂いだ青臭いその匂いを胸一杯吸い込むと距離も時間も私も何もか
も関係なく心が底へと突き飛ばされるどうやら私は許されてないらしいその証
拠に先ほどからほら皆が私を見る目つきは横に長く黒目より白目の分量が多い
始末だ青い匂いの中で許しを請う事もせずかつて私が指を挟んで内出血をこさ
えた事のある
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