記憶の物語/アンテ
アを蹴破って出ていってしまった
気を取りなおして整理をつづけ
記憶の山が更にいくつも出来あがったが
注意しているつもりが時々うっかり山を崩してしまって
そのたび記憶は老人や幼児などに姿を変えて
みな彼女に悪態をついて外へ出ていった
そうこうするうち
記憶はすっかり減って
後にはうまく分類できない断片ばかりが残った
それらをかき集めて山を崩してみると
気味の悪い動物になって
床を這って彼女にすり寄った
こんなものでも自分の記憶だと思うと哀れで
部屋で飼うことにしたところ
動物は毎日の新しい記憶をすべて食いあさり
成長して彼女そっくりになった
さすがに怖くなって
偽物
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